ここでは、年アド3級の技能応用問題を解くための知識についてお伝えしていきます。
言葉の表現は、厳密な正確さよりも、ざっくりとしたわかりやすさを重視しています。初級者の方にも伝わりやすいように書いているため、専門的に勉強している方は少しまどろっこしい部分もあるかもしれません。
問-49.50の登場人物はJ夫さんとその妻です。

J夫さんは60歳代後半になって、長年勤めてきた退職をすることになります。
そこで年金や退職金にかかる所得税についての話がでてきます。
なお、49と50は内容の順番が入れ替わることが多いです。(年金→退職金 or 退職金→年金)

ポイントはこちらです。
- 所得税の計算の基本
- 年金から差し引く控除額の求め方
- 年金から源泉徴収される所得税
- 退職金から差し引く控除額の求め方
所得税の計算のキホン
所得税を算出する流れをざっくり図でイメージしてください。

収入から『控除額』(もしくは必要経費)を差し引いたものが『所得』です。
さらにそこから『所得控除』を差し引いたものに税率をかけると所得税額が算出されます。
問題では、年金や退職金の『○○所得』の額がいくらなのか?を求めることが多いです。また、たまに『控除額』について問われることもあります。

何の額を求めるのかを確認してから計算しましょう。
公的年金にかかる雑所得の金額
公的年金等控除額
『公的年金等の収入金額』から『公的年金等控除額』を差し引いたものが、公的年金等にかかる『雑所得』になります。

公的年金等控除額は、公的年金等の収入金額に応じた計算式で求めます。
事例ではこのような☟表が提示されています。

65歳以上は最低110万円の控除額があるということは、「65歳以上で公的年金の額が110万円以下」の場合は公的年金等にかかる雑所得は0円になる→「年金から所得税は発生しない」と言えますね。
(公的年金の所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合)
この問題でまずやることは

ことです。
表の水色部分の式の(A)の額になる『公的年金等の収入額』は、問題の事例にあげられている年金を合計したものです。
今のところ、事例では次の3つがあげられています。
・老齢厚生年金(加給年金額を含む)
・老齢基礎年金
・企業年金基金(老齢給付)→これも計算に含めます!
年金額を合算したものを表の水色部分の式の(A)にあてはめて計算し、それが110万円より大きい額ならそちらが控除額に、小さければ110万円が控除額になります。
そして、問われているのが公的年金等にかかる雑所得の金額である場合は、
『収入-控除額』で公的年金等にかかる『雑所得』の金額をもとめます。

ここまでの計算を具体的にやってみましょう!
年金収入の合計が350万円とすると…
350万円×25%+27.5万円=115万円
115万円>110万円
→公的年金等控除額は115万円
350万円-115万円=235万円
→公的年金等にかかる雑所得は235万円
ちなみに、年金収入の合計が330万円だった場合
330万円×25%+27.5万円=110万円
110万円=110万円
になりますから、
- 年金収入を合算した額が330万円以下であれば控除額は110万円を使う。
- 330万円を超えるなら水色部分の式を使って控除額を求める。
という処理の仕方もできます。

実務的には年金額が300万円超えになる方はめったにいらっしゃらないですけど…
源泉徴収・特別徴収
所得税の源泉徴収
公的年金等の支払を受けるときは、原則として収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に5.105%を乗じた金額が源泉徴収(天引き)されます。
(この税率を10.210%とした誤りの選択肢が出題されたことがあります!)
源泉徴収税額 =( 年金支給額 - 社会保険料 − 各種控除額 )× 5.105%
源泉徴収税額の算出の際には『公的年金から特別徴収される介護保険料』などの社会保険料や『配偶者控除・基礎控除』等の各種控除の金額が年金支給額から控除されます。
確実に控除できるものは予め控除(差し引き)しておくことで、源泉徴収される税額を抑えることができます。
なお、『生命保険料控除』や『医療費控除』については源泉徴収の際には考慮されませんので、これらの控除が必要になる場合は確定申告が必要となります。
介護保険料の特別徴収
当該年の4月1日現在において65歳以上であり、特別徴収の対象年の年金支払額が年額18万円以上である場合、介護保険料が年金から特別徴収(天引き)されます。
介護保険料は社会保険料控除の対象ですので、源泉徴収税額を計算する際に介護保険料の額が年金支給額から控除されます。(源泉徴収税額の計算式の『社会保険料』の部分)
すぐやる!ドリル
事例:J夫さんが65歳以降に受給する年金額は、老齢厚生年金160万円,老齢基礎年金78万円,企業年金基金86万円。
J夫さんの公的年金にかかる雑所得の金額はいくらでしょうか?

(160万円 +78万円 + 86万円)× 25% + 27.5万円 = (㋐ )万円
(㋐ )万円 < (㋑ )万円
(160万円 +78万円 + 86万円) -(㋑ )万円 =(㋒ )万円
【答え】㋐ 108.5 ㋑ 110 ㋒ 214 ⇒ この額が公的年金等にかかる雑所得として所得税の課税対象になる
課税対象となる退職所得金額
退職金の税負担の軽減
退職一時金は、①賃金の後払い ②功労褒賞 ③生活保障という性質をもっています。

そこで、課税において次のような優遇があります。
- 他の所得とは分けて税額を計算する(分離課税)
- 勤続年数に応じて控除額が増える(退職所得控除額)
- 退職所得控除後の金額の1/2を課税対象とする(退職所得金額)
これらの適用を受けるには『退職所得の受給に関する申告書』の提出が必要です。(問題では提出しているものとして解きます。)
退職所得控除額
退職一時金から差し引く控除は、勤続年数に応じて控除額が増えるようになっています。

勤続年数が1年未満の端数の年は1年に切り上げします。

②の式について詳しく説明します。
まず、800万円というのは、40万円×20年のことで、『勤続20年までの控除額』です。
そして、勤続20年を超えると、勤続1年あたりの所得控除が40万円から70万円に増額されます。
70万円×(勤続年数ー20年)は、『勤続20年超えの部分に70万円を掛ける』ことを意味しています。

色分けで図解するとこのようになります。

『8・7・2』を『パイナップル』もしくは『パナップ』で覚えるという暗記方法も、なくはないですね。「プ」はひーふーみーよーの「ふ」です。

退職所得金額
退職所得金額は、退職一時金の額から、上記で求めた退職所得控除額を差し引いて、さらに1/2にした額です。
退職一時金の額 − 退職所得控除額 × 1/2 = 退職金所得金額

『×1/2』がめちゃ重要です!
問題の選択肢には『×1/2』するのを忘れた場合にぴったり該当する額(正解の金額の2倍の金額)の選択肢がダミーとして入っているので、くれぐれも注意してください!!
逆に言うと、他の選択肢の1/2の金額になっている選択肢が正解である可能性が高いと言えます。絶対とは言えませんが…
すぐやる!ドリル
事例:J夫さんは勤続 37年8ヵ月 退職一時金は2,100万円支給される予定。J夫さんは「退職所得の受給に関する申告書」を提出済みである。
①.『退職所得控除額』を求める計算式は?
(㋐ )万円 +(㋑ )万円 ×{(㋒ )年 - 20年 }=(㋓ )万円
②.①の控除額を使って『退職所得金額』を求める計算式は?
{ 2,100万円 - (㋓ )万円 } × (㋔ / )= 20万円
今回の事例では、退職金によって2,100万円の収入がありますが、所得は20万円だけになります。
この所得に税率をかけて税金を計算します。退職金は税金が大幅に優遇されているのです。
【答え】㋐ 800 ㋑ 70 ㋒ 38 ㋓ 2,060 ㋔ 1/2
以上、問49.50のインプットでした。
基本知識編ではここに載せた論点よりも幅広い範囲の学習が必要になります。 また、社労士やFPを受験される方は、必ずそれぞれの専用のテキストで情報を補完してください!
過去問スペシャル解説!!
2021年10月試験を題材に、問49.50の解き方をご紹介しています!(noteへのリンク)
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