7月3日の社会保障審議会年金部会で、令和6年(2024年)年金制度改正における年金財政の結果が発表されました。
財政検証の結果は、今後の年金の制度改正にも関わってくる大きな意味を持ちます。
今後、このテーマでの記事を数回にわたって書いていきますね。
年金部会の様子はYoutubeで配信されるので、リアルタイムで聴講しました。
財政検証とは?
そもそも『財政検証』とは何なのか、再確認しておきましょう。
財政検証は、年金の定期健康診断のようなものです。
日本の将来の経済情勢について良いケースから悪いケースまで複数のパターンを想定し、それぞれのパターンにおいて年金の財政がどうなっていくのかを試算します。
その結果を考慮に入れながら、今後の年金の制度改正案などを検討していきます。
なかでも、「マクロ経済スライド(年金額の上昇抑制)をいつまで続けるのか」は重要な検討事項です。
財政検証は通常5年ごとに行われます!
2024年財政検証のトピックス
経済の想定ケースが6から4つになった!
将来の経済の前提について、従来はⅠ~Ⅵの数字で表されていましたが、これが6つに絞られ、さらに次のような名前がついて、内容がわかりやすくなりました。
- 高度成長実現
- 成長型経済移行
- 過去30年投影
- 1人当たりゼロ成長
経済情勢がいい未来なのか悪い未来なのかが字面から伝わりますね!
財政見通しは改善され、マクロ経済スライドの終了時期も早期化された!
要因として「女性・高齢者の労働参加」「積立金の運用」この2つが2019年の財政検証における想定以上に向上したことが挙げられていました。
年金財政は改善されている!この事実はもっと広まってほしい!!
性別,世代別の平均年金額や分布推計のデータが公表された!
従来はモデル世帯(会社員の夫と専業主婦の妻)の2人が受け取る年金額しかわからなかったのですが、今回は1人で受け取る年金額のデータが男女別に示されました。
また、世代別の将来の年金額の見通しの分布が示され、経済成長が進めば「若い世代ほど将来受け取る年金が増える」ことや「女性の年金が増える」ことがビジュアルでわかるようになりました!!
これは大きな改善ですね!
オプション試算は5つ
①被用者保険の更なる適用拡大
②基礎年金の拠出期間延長・給付増額
③マクロ経済スライドの調整期間の一致
④65歳以上の在職老齢年金の仕組みを撤廃
⑤標準報酬月額の上限の見直し
オプション試算は、『こんな仕組みを取り入れてみたら見通しがどう変わるか?』をシミュレーションするものです。
これが新たな年金制度改正につながります。
「さらなる適用拡大」や「在職老齢年金の支給停止の緩和or撤廃」、「65万円より上の標準報酬月額等級の設定」あたりは今後現実味を帯びてきそうです。
しかし、②については凍結されてしまいました…
基礎年金45年化は見送りに…
橋本年金局長から直接お話がありました。
基礎年金45年化について負担だけを切り取った報道やネット批判により、年金制度改正を進めていく上での足かせになると判断せざるをえない。
とのことでした。
「足かせ」というのはつまり、野党が与党を批判する材料を作ってしまうことで他の改正も滞ってしまいかねないといういことです。
年金の改正には、仕組みとして良いかどうかの論理だけでなく、政治的な思惑も影響してしまうのです…
年金受給額を増やすことができる制度になるはずだったのに、世論がそれを潰してしまった形になります…
これについては別の記事で詳しく書きます。
外国人の入国超過数が反映された
『入国超過数』とは、入国ー出国の差ですね。外国人も日本に住めば日本の年金制度に加入しますからね。外国人労働者の増加により、その数字がデータ上無視できないものになってきたということですね。
まとめ
今回は文章だけでざっと書かせていただきました。
モデル世帯の所得代替率だけでなく、世代別の年金の実質額の見通しが男女別に示されたことが大きな変化です。
片方働き夫婦という、いまどきめずらしくなってきた世帯をモデルにした所得代替ではなく、年金の実質額を重視していく考えの現れですね!
それぞれ掘り下げていきたい部分がありますので、今後、財政検証のテーマで記事を追加していきます!