今回は、私が愛読している年金の本をご紹介しますね。
「年金の正しい理解を広めたい」というのが私の思いです。
しかし、年金は何かとネガティブな側面だけを語られがちです…
メディアにしろ、ネットにしろ…
そして、その偏った情報を鵜吞みにして誤解したままになっているケースがよく見受けられます。
そこで、年金に対するイメ―ジを変えてくれる本を3冊選びました!
知らないと損する年金の真実
経済コラムニストの大江英樹氏の本です。
著者自身がこの本を「年金版ファクトフルネス」と表現されているように、年金に関する思い込みや勘違いについて、正しい見解を根拠を交えてわかりやすく説明してくださっている本です。
タイトルが「知って得する」ではなく「知らないと損する」になっているのがうまいな~と思います。
人間は、「得」よりも「損」に強いインパクトを感じるので、この方が「おや!?」と感じてもらえそうですね!
しかも実際に、知らなくて損をしているケースってありますからね…
この本を読むとこんなことがわかります。
- よく語られる「神輿→騎馬戦→肩車」はミスリード
- 今の高齢者がすごくトクをしているわけではない
- マクロ経済スライドとは何なのか
新書サイズで269ページという比較的軽めのボリュームと、大江氏のわかりやすい語り口もあって、サクサク読める本です。
年金制度の細かい知識よりも、年金に対する不信感を払しょくすることに重点を置いている本です。
また、2022年の法改正を踏まえ、これから年金に対してどう向き合っていくのがよいかについても書かれています。
このおかげで、資料の名称からのネット検索がしやすいです!
参考資料を巻末にまとめて掲載している形式だと、どの資料がどの話題に対応しているのかわかりづらいので、こうはいかないんです。
これはいい設計ですね!!
私にとっては、この本に書かれている内容はだいたい既知のものです。
俺すげぇ!と言いたいわけではなくて、後でご紹介する”ある本”のおかげなのです。
そこで私の場合は、内容自体よりも表現を学ぶつもりで読んでいます。
難しい事柄をわかりやすく伝えるためにはどんな語り口がいいのか。効果的な伝え方にはどんなものが考えられるか。
そんな視点で勉強させていただいています。
この本は一般の方でも読みやすいです!新書ですし。
幅広い年代の方に読んでいただける本ですが、年金受給直前になってから知るよりも、若いうちに知っておいたほうが役に立つことが学べる本ですね!
人生100年時代の年金・イデコ・NISA戦略
日経新聞社の編集委員兼紙面解説委員で、社会保険労務士やCFPの資格もお持ちである田村正之氏の本です。
前身として『人生100年時代の年金戦略』という本が2018年に出版されています。
その改訂版とは銘打っていないものの、実質的なアップデート版といった内容です。(私の勝手な解釈です。)
☟こちらが2018年のもの
この本を読むとこんなことがわかります。
- 年金は人生のリスクに備える総合保険
- 年金財政は誤解だらけ
- 資産運用のセオリー
2018年版の『人生100年時代の年金戦略』は、ちょうど私が社労士に合格した年の11月に出版された本なんです。
この本では「年金の本質は保険である」ことを強調しています。
支払った金額に対して損か得かという考え方も(やはり関心ごとではあるので)話題にあげられはするのですが、年金の本質はあくまでも「保険」だということを軸に話が展開されています。
そして、老齢年金だけでなく、遺族や障害の年金にも触れています。
2022年版(ピンク色のタイトルの方)は、特にこの資産運用の部分が大幅に強化されています!
社労士の先生の中には、公的年金には詳しいけど、私的年金や資産運用にはちょっと疎い…という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方にぜひおすすめの本です!
わかりやすく書かれていますので、一般の方にもおすすめできます。
2018年版は261ページだったのですが、2022年版は336ページまでボリュームアップして、かなりずっしりとした内容になっています。
2022版は2018年版の内容も網羅していますので、今から買うなら2022版の方だけを買えばOKです。
これ一冊で、幅広く学べる本です!
じつは、この本の主張の軸である「年金は保険である」というのも、”ある本”に書かれてあることなんです。
では、さきほどから私が”ある本”と言っている本を紹介いたします。
ちょっと気になる社会保障V3
表紙にへのへのもへじが描かれているので、通称『へのへの本』と呼ばれています。
タイトルに「社会保障」と書かれているように、年金だけに限定した本ではなく、医療・介護や生活保護までを総括した話が書かれています。
この本を読むとこんなことがわかります。
- 他の著者も参考にしている年金知識の源泉
- 年金の歴史に隠された裏事情
- 社会保障の国際比較
一般向けの年金の本よりも、もっと俯瞰した、政策を講じる側の見解を垣間見ることができます。
この本が2,200円+税で読めるのはかなりお得です。
教授が書かれている本だと、さぞ文章が堅くて読みづらいのでは…? と思うかもしれません。
しかし、この本はそんなことはなくて、語り口調で書かれており、わりと読みやすい文章になっています。
文章中の句読点が『、。』ではなくて『,.』になっているところは論文っぽいです。
ただ、やはり読み手に年金の基本知識があることが前提の内容になっているので、社労士やFPの方など、社会保障を勉強している人向けの本だと思います。
「年金がなぜ積立方式ではなく賦課方式なのか」
「なぜベーシックインカムを実施しないのか」
「世界の他の国の年金とくらべて日本の年金はどうなのか」
こういったことについて理論立てて話をしてくださっています。
じつは、先に挙げた2冊の本の著者は、この本から大きく影響を受けています。大江氏も田村氏も、ご自身の著書の中でそれを名言されています。
市販されている年金の本に書かれていることは、この本からのオマージュがじつはけっこうあるのです。
私はこの本を読んで、年金の「世代間不公平論」や「マクロ経済スライド」、「厚生年金保険の適用拡大」に対して持っていたイメージが変わりました!!
社会保障を学んでいらっしゃる方には、ぜひおすすめしたい一冊です!
へのへの本には、「もっと気になる」の方もあります。
こちらは社労士連合会の研修でも教材として使われました。
「ちょっと気になる」を読んでいること前提で話が進むので、新たに手を付けるなら「ちょっと」→「もっと」の順に読まれた方が良いかと思います。
まとめ
今回は、数ある年金の本の中でも、「年金に対するイメ―ジを変えてくれる」という観点で3冊を選んでみました。
これらを読むと、年金に対するネガティブなイメージが払しょくできます。それは、年金を前向きに理解していく上で、大いに役立つことです。
年金のことを語れる仲間が増えるとうれしいです。
年金を正しく理解して将来の漠然とした不安を減らし、さらに公的な保障で足りない部分は自分で考えて対策をする。
そういう先のことはさっさと済ませた上で、何事にも代えられない「今」を楽しむ。
年金を学ぶことは人生を楽しくするためにも良いことだと私は考えています。
年金が苦手な方に一冊おすすめするなら…
当ブログの読者の方には、社労士やFPの受験生の方もいらっしゃると思います。
受験するうえで必要だけど、年金は得意ではない。むしろ苦手…
という受験生の方が「年金に親しみを持ちたくて一冊読んでみたい」場合、どれがいいか。
それでしたら、大江英樹氏の『知らないと損する年金の真実』がおすすめです!
一番コンパクトでサクッと読めますので。それでいて、2022年度の法改正の意義なども学べますよ!